③「翻訳に必要な最低限の英語力」を身に付ける。
翻訳に必要な最低限の英語力とは「基礎的な読解力」「専門分野の英文読解力」「単語力」の3つ。
「基礎的な読解力」はThe New York TimesやThe Washington Postの大手新聞サイトを毎日読むことによって養う。
「専門分野の英文読解力」は、その専門分野の海外サイトやニュースサイトに毎日、目を通して養う。
「単語力」はTOEIC向けの単語教材を活用して養えるが、翻訳家の場合、仕事中、随時、仕事道具のパソコンを使って単語の意味を調べることができるので、無闇に覚える必要はない。
文法力については高校で習う程度のものでよい。
尚、翻訳家にとっては不要な「リスニング」と「スピーキング」の勉強はする必要はない(通訳にとっては必要だが、翻訳家にとっては不要)。
「スター・ウォーズエピソード3の番最後で、物凄い悲劇が訪れるんですね。主人公アナキンが地獄のドン底に突き落とされるんです。そこで、こう叫ぶんですね。英語で、「NO!」(ノー!)って叫ぶんですよ。これはまあ、「ノー」ですよね?あの、どんなに聞き取りの出来ない人でも、どんなに英語が出来ない人でも、「NO」は「ノー」ですよね?これがですね、字幕の女王、某戸田先生のですね、字幕ではですねえ、 「アリエナイ!」ってなってたんですよ。いきなり女子高生の、なんか日本での、今流行ってる流行り言葉を突然叫ぶんですよ。これ、有りえない。だってさ、20何年間、30年間近く続けてきたね、大河ドラマですよ。その悲劇の1番最後のセリフが、「アリエナイ」ってそんな女子高生言葉になって、どうするのか?!それがですね、試写の段階で、もう抗議が物凄くてですねえ、 「こんなバカな!」と。1番泣かせるとこで、1番重要な、その、1人のルーカスって男が30年近くかけて作ってきた話を、この女子高生言葉でブチ壊すのか!って皆怒ってですねえ。で、結局映画会社が、フィルムを、プリントを焼き直して字幕を修正したらしいんですよ。
さらに、『ロード・オブ・ザ・リング』(The Lord of the Rings)っていう映画の中で「You are not yourself」ってセリフがあるんですが、「あなたは我を失ってる」って言ってるんですね。これ直訳で十分なんですね。ところが、この、え~、某、字幕の女王の訳はですねえ、 「嘘をつくな!」ってなってるんですよ。で、これは要するに、「指輪をちょっと貸してくれ」って言ってるんで、それに対して「嘘をつくな!」って言ったセリフにしちゃってるんですけども、でも、これ、「You are not yourself」っていうセリフが聞き取れちゃうんで、誰でも!これは全然意味違うじゃないか、って言って皆が凄く怒ってですね、特に『ロード・オブ・ザ・リング』のファンがすごく怒って、物凄い抗議の手紙を英語でですね、監督のピーター・ジャクソンのところに送りつけたんですよ。それで、ピーター・ジャクソンの方がですね、今度の字幕はちゃんとしてくれ、と。「誰がやったのか知らないが、その人は代えてくれ」っていうふうに言ったんですけども、とこらが、映画会社は代えなかったんですよ。その字幕の女王にやらせたんですよ、その後も。で、これは一体どういうことなのか?っていう・・それで、結局ですね、原作の指輪物語を翻訳してる人がですね、その字幕をチェックする、ってことで、えっと、その字幕の女王の字幕を更にもう一回チェックをして、完成版に持っていったんですけど、その後の『ロード・オブ・ザ・リング』って・・・でもなんでそんな手間をかけるのか?(笑)っていうか、普通の人にやらせりゃいいじゃないか、そんな間違いが生じない人に、と思うんですけども。英語の問題ではないんで、この人の場合の、問題は。この人のは、一般教養の問題なんですよ。スタンリー・キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』(Full Metal Jacket)って映画をですね、翻訳してですね、字幕をつけたんですが、キューブリックがその字幕をチェックしたら、『ぜんっぜん、これはダメだ!」って言って却下されて、原田眞人さんて映画監督が字幕をやり直した、っていう経緯があるんですよ。この人、監督とかからですねえ、この人にやらせるな、とまで言われてるのに日本の映画会社はこの字幕の女王にやらせ続けるんですよ。実は英語の問題で、既に無いんですね。英語の問題ではないんで、この人の場合の、問題は一般教養の問題なんですよ。『オペラ座の怪人』(The Phantom of the Opera)ていう映画があるんですけども、この中でですね、「パッション・プレイ(passion play)」っていうセリフが出てくるんですね。「パッション・プレイ」っていうのは、あの・・この間『パッション』(The Passion of the Christ)て映画が日本で公開されましたけど、これはキリストが、十字架にかけられることを言いますね。「受難劇」と訳されるんですけども、とこらがそれをですね、この『オペラ座の怪人』の中で、この字幕の女王はですね「情熱のプレイ」って訳したんですよ。実際はですね、イエスキリストが十字架に架けられるという悲劇を指してるのに、この人は「情熱のプレイ」って訳しちゃったから、「パッション・プレイ」が突然なんかすごく、汗みどろでですねえ、ラテン系の男がなんかすごい、ランバダを踊りながらセックスしてるみたいなイメージになっちゃったんですよ・・・。で、「パッション・プレイも知らないの?」っていうか、この間『パッション』が公開されたばかりなのに・・っていうねえ。でね、僕がですね、この字幕は変だと思い始めたっていう、きっかけになった話をちょっとしたいんですけども昔々、『インディ・ジョーンズ』(Indiana Jones)っていう映画シリーズがありましたよね?インディ・ジョーンズが「ヌハチの宝」って、セリフで言うんですね。字幕で。 「ヌハチ」って何だろう?って僕が思ったら、それ、どう見ても、「愛新覚羅ヌルハチ」のことを言ってるんですよ。これは中国清朝の初代皇帝の名前なんですよね。その頃から僕は「この人の字幕は変だ」とずっと想い続けてるんですけども、クエンティン・タランティーノの映画の『パルプ・フィクション』(Pulp Fiction)でですね、1番最後の、最後の方なんですけども、ブルース・ウィリスがバイクに乗って登場するシーンがあるんですよ。そのバイクを見た、ま、ヒロインがですね、 「凄いバイクね」って言うと、ブルース・ウィリスは「これはなあ、チョッパーなんだよ」って言うんですよ。で、「チョッパー」っていうのは、まあ、『イージー・ライダー』(Easy Rider)で主人公達が乗ってたオートバイですよね。あのハンドルが上にあがったような・・・凄く前の前輪のとこの・・・アレが長くて・・で、「改造バイクだよ」っていうふうに言うんですよ。「チョッパーだよ」って。とこらが、これ、戸田先生の字幕はですね、 「ヘリコプターだよ」って訳してたんですよ。どう見てもバイクなのに(笑)。画面を見てないんですよ。この人、出来上がった映画に字幕がついた状態のを見て、チェックしてないとしか思えないんですよ。1番恐ろしいのは、チョッパーを辞書で、最初に英語辞典で引くと、1番最初に「改造バイク」って出てるんですよ。辞書引いてねーじゃん!・・て言うのと、あと、まあ、2番目に出てくるのが警察用語で「ヘリコプターのこと」って書いてあるんですよ。ただ、ナゼ、警察用語で2番めの意味として出てくるものを、画面にバイクが映ってるのに・・(笑)。弟子にやらせてる可能性は非常に高いですねえ。弟子にやらせても別に構わないんですけど、その後のチェックを怠ってるっていうのが、やっぱり画面と絵がつながらない、画面と字幕がつながらない、って問題になってて、『ハムナプトラの秘宝』(ハムナプトラ/失われた砂漠の都 The Mummy)ってミイラ映画があるんですけど、その中で棺を開くシーンがあって、「棺を開け」って「Open the chest」って言うんですよ。で、その場合、チェストってのは日本語にもなってますけど箪笥とかはチェストですね。要するに、棺を開け、っていうシーンなんですが、戸田さんの字幕では「胸を開け」になってるんですよ。でもこれ、画面見れば棺が開くシーンじゃねーかよ!っていう(笑)。だから多分これ、チェックをしてないんですね。出来上がったあとに。あともっと大きな問題で、基礎教養があまりにも欠けているっていうことが大きいんで、これが1番僕はちょっと、非常に、問題があるな、と思ってるとこで、例えば、『ナショナル・トレジャー』(National Treasure)ってこの間公開された映画では、「北極大陸」ってセリフが字幕の中に出てくるんですけど、北極には大陸は無いんですよ。北極に大陸が無いってことをまず、知らない。この人。これは中学の地理でやります、ハイ。あとねえ、最近では『ブリジット・ジョーンズの日記』(Bridget Jones’s Diary)っていう映画の続編でですね、『ダロウェイ夫人』(Mrs Dalloway)ていう小説が出てくるんですね、セリフの中で。それを、この人は、「エッチビデオ」って訳したんですよ。これ、ヴァージニア・ウルフ、女流作家で、イギリスのですね、代表的な女流作家の代表作である、『ダロウェイ夫人』を、 「エッチビデオ」っていうふうに、戸田奈津子先生は訳しました! 「夫人」てつくとみんな「エマニエル」だと思ってんですよ(笑)・・・ 「夫人」てついただけで興奮しちゃう、っていう人なのかなあ・・」